第1部 学部長、名誉教授講演
2024年10月12日 13:00-16:30開催
上智大学総合グローバル学部と、上智大学総合グローバル学部同窓会は、総合グローバル学部創立10周年記念行事、「原点から未来へ『総合グローバル』ってなに?」を開催しました。
タイトルの通り「原点から未来へ」をテーマに、これまでの総合グローバル学部、そして皆さん自身の原点を見つめ、未来につなげることを目的としております。
本記事では当日行われた学部長、名誉教授による講演と、卒業生によるパネルディスカッションの様子をご報告します。
“時のしるし”に耳を傾け、チャレンジを続ける
総合グローバル学部創立10周年にあたって
上智学院 理事長・上智大学 総合グローバル学部 教授 サリ・アガスティン先生
総合グローバル学部の創設10周年記念日のお祝いと喜びを申し上げます。そして、学部創設にご尽力いただいた先輩の先生方、大学の関係者の皆様、総合グローバル学部を様々な形で支えてくださっている教職員の皆様に心から御礼を申し上げます。
上智大学が時代の変化に適応していく取り組みの模範として、この学部は使命を果たしていると考えています。本学部の設立は、2013年の上智大学創立100周年を記念し、現在の学問的発展や横断的可能性、グローバル化への適応を踏まえて検討されました。その結果、1年後の2014年に総合グローバル学部が設立され、今回10周年の喜びを分かち合うことになりました。
上智大学は時代の大きな変化を経て発展し、教育研究社会貢献を通して一定の評価を受けているのですが、総合グローバル学部設立は、この意味で良い評価を受けていると思います。
本学部設立は、イエズス会創立者イグナティウス・デ・ロヨラの教え「時のしるしに耳を傾け、時、場所、人に適用する」ことの実践例と言えます。イエズス会教育の現場として、非常に嬉しく思っています。イエズス会の歴史を振り返りましても、1548年にイタリアのメッシーナで聖ニコラス学校を設立し、また1913年には日本に高等教育機関を作るためにイエズス会員を派遣するなど、時代のニーズに応えてきました。
現役の教職員、そして学生の皆さんには、ここで先生方と思い出を振り返り、学部設立の経緯を理解していただきたいと思います。良いものを作っていくことは簡単ではなく、大変な苦労を伴います。チャレンジを受け、変化が必要かどうかを識別し、大切にすべき価値観を追求しながら挑戦するわけですから。皆さんも一緒に上智大学を支えていただきたいと思います。
改めて皆様お疲れ様でした。そして、おめでとうございます。
地域に根付いたグローバルスタディーズを
新学部創設までの道程
上智大学 名誉教授 総合グローバル学部 初代学部長 寺田 勇文先生
総合グローバル学部は今から10年前の2014年4月に創立されました。創設の準備はその3年前、当時外国学部長に就任したばかりだった私に副学長(現学長)から新学部設立の協力要請があったことから始まりました。
当時の外国学部には六つの語学科(英語、ドイツ語、フランス語、イスパニア語、ロシア語、ポルトガル語)と三つの副専攻(国際関係、アジア文化、言語学)がありました。いずれも学内外から多くの学生が参加する人気プログラムで、先生方は国内外で広く知られ、大活躍をしておられたと思います。
この副専攻には計20名近い専任教員がおり、いろいろな事を自由にやっていました。1990年代以降になると、経営環境の変化、そして国際系、グローバル系の新学部を作りたいという大学の理事会の意向があり、2011年の春ごろ、その20人の教員を中心に新学部設立の検討が始まりました。
また、2002年から2007年まで文科省のCOE(Center Of Excellence)プログラムとして「地域立脚型グローバルスタディーズの構築」という4年半のプロジェクトを実施し、地域研究に立脚したグローバルスタディーを行いました。文科省から3億円超が投入された、当時としては非常に大きなプロジェクトです。こうした実績も新学部設立の基礎となって2006年にグローバルスタディーズ研究科を設立、2014年4月に総合グローバル学部が誕生したのです。
「総合グローバル」の名称は、国際政治学や国際関係論、地域研究など、どれか一つではなく、全てを見据えて世界の動きを勉強したり研究し、社会で活躍してほしいという思いを込めたものです。
最後になりますが、総合グローバル学部は決して「総グロ」と呼ばないでください。総合的なグロテスクな学部ではないので(笑)。ぜひ「総合グローバル学部」もしくは「FGS」と呼ぶようにお願いしたいと思います。
「ここに入ってよかった」と学生が思えるように
学部創設当時の思い出
上智大学 名誉教授 総合グローバル学部 初代学科長 樋渡 由美先生
先ほど寺田先生が総合グローバルを「総グロ」と言わないようにとおっしゃっていましたが、「総グロ撲滅作戦」はぜひ皆さん、続行してください。本当にこの呼称はね、美しくない。ぜひなくしたいです(笑)。
冗談はさておき、私は学科長を2期4年間務めましたが、最初に感じたのは「この学部を作って大丈夫だろうか」という不安でした。少子化が進み、定員割れを起こす私学もある中、上智のブランド力があるとはいえ果たして大丈夫なのか。学科長業務は、絶対に失敗が許されない仕事だとも思っていました。
外国語学部でずっと働いてきた私にとって、学生全般に関わる業務は初めてで、毎日が不安でした。特に1期生入学後は、履修登録や「Loyola」のトラブルなどが発生し、パニックになったのも今では良い思い出です。学科の事務室の皆さんに助けられながら、また当時の外国語学部長の谷先生に定期的に相談する時間を設けていただきながら、何とか仕事をこなしていました。
私が学科長として第一に考えたのは、新入生に「ここに入ってよかった」と思ってもらうことです。そこで思いついたのが、1期生全員の名前を覚えるということでした。
またどんな学年にも、学校に馴染めない学生はいるもので、私が1番心配したのは適応に苦しむ学生さんです。学生や保護者との個別面談を行うなど、学科長としてできる限りのことをしました。
多くの問題は時が解決してくれます。在学中にトラブルを抱えていた学生さんも、今は自分の道を見つけていることでしょう。
また、社会に出て活躍している卒業生も、職場の問題などいろいろ苦労があるかもしれません。ですが、それも時が解決してくれます。ですから、今が大変でも落ち込まない、落ち込んでもいいから潰されないことが人間として生きていくためには大事だと思います。
卒業生が社会でどのように活躍をするか、それでこの学部の進化や評価が決まっていきます。今はまさに、その段階かと思います。私は新しい学部で学科長として、また一教員として皆さんと少しでも接点を持って上智大学での職務を終えられたことを、とても幸福だと感じています。この後も学部が発展し、同窓会も盛んになって、新しいものを生み出していけばいいなと思います。
皆さんのご健康、ご発展をお祈りいたしております。
多様な学びの場を展開し、大きな人間を育てて
ビデオメッセージ
上智大学 学長・理工学部 教授 曄道 佳明先生
私は総合グローバル学部設立当時、それなりの関与をさせていただきました。外国語学部の教授会で説明を行い、反対意見も含め多くの意見を伺いました。数多くの意見交換を行い、ようやく新学部設立にこぎつけた印象を持っています。話し合いの過程では、多くの先生方からご期待やご希望を伺うこともできました。
本学部は大きな成功を収めていると考えています。それはまず、社会的な評価の高さです。産業界との会話でも「上智大学には新しい総合グローバル学部がありますね」という声を多く聞き、社会からの期待の高さを実感しています。それは、卒業生の評価、あるいは教育に対する評価、そして研究活動に対する評価でもあります。ここに集う学生さんたちの非常に質の高いレベル、これに上智大学として、誇りを感じざるを得ません。
シンポジウムやワークショップで国際機関や産業界のトップに積極的に質問する学生の姿は、まさに私がこの学部に期待したものです。この学部の挑戦が実っているところだと思います。
在学生や卒業生の皆さんとお話をすると、多くが「総合グローバル学部で学んでいくうちに入学時に持っていた考えがどんどん変わり、新たな可能性を感じることができた」と語ってくれます。これはまさに教育の醍醐味であり、彼らの可能性を広げる教育を実践できている総合グローバル学部の力だと思います。
私からの学部への期待は、「大きな人間」を育てていただきたいということです。そのためには、「学びの自由度」についてより一層のご勘案を是非お願いしたいと思います。多様な学生がこの学部に集まり、多様な進路を求めていきます。そのためには、多様な学びの場が展開される必要があります。今まさにそれを実践しておられる総合グローバル学部において、さらにその視野・視点を広げ、彼らの可能性に期待する教育を行っていただければと思います。
学部の益々のご発展をお祈りし、そして皆様のご健勝ご発展を祈念して、私からのご挨拶とさせていただきます。
多様性を認め、視野の広い真のグローバルマインドを持とう
学部長よりご挨拶
上智大学 総合グローバル学部 教授 学部長 都留 康子先生
設立当初は半数近くの教員が他大学や国際機関から集まり、何をするのかわからない状態でした。前任校の先生にも「グローバルを総合するって何?」と聞かれたことを覚えています。
1期生は180名ほどで始まりました。先輩がいない中で「自分たちが学部を作る」という熱意を持ち、積極的に学部を作ってくれた姿をとても頼もしく感じました。樋渡先生は「総グロ」という呼び方をやめさせようと繰り返し言われ、1年生全員の名前を覚えるなど、最初の雰囲気を作ってくださいました。今では「FGS」という呼び方が浸透し、会議などでも「総合グローバル学部」と言われるようになりました。上智の看板学部になったと感じています。
現在は創設時の教員の半数近くが入れ替わり、世代交代の時期に入っています。創設時の思いや意識を共有し、当時のご苦労を共有することは、まだ短いですが伝統を次の世代に受け渡す良い機会だと思います。
コロナ禍の4年間は学部全体がシュリンクした感じがありましたが、今は通常状態に戻り、次の10年に向けて新たな一歩を踏み出しています。創設時の思いを大事にしながら、部の一層の発展に尽くすことを、改めてお誓いしたいと思います。同窓会の人たちが学部とつながり、時には学部生を鼓舞し、アドバイスをくださり、支えてくださることが学部の発展にとって不可欠であります。これを、同窓会の皆さんに心よりお願いしたいと思います。
FGSの「グローバル」とは、働く場所や目標がグローバルということではなく、ハートの部分で多様性を認め合い、広い視野を持ち、それぞれの持ち場で活躍する、あるいは自分らしく生きることだと考えています。
卒業生の皆さんのことを、私はとても誇りに思っています。今後ともぜひ総合グローバル学部のことをよろしくお願いいたします。
Comments